• 11月 13, 2024

睡眠時無呼吸症候群について

とても心配な出来事がありました。 

2024年11月11日に石破首相が、衆院本会議での首相指名選挙中に目を閉じてうつむいている姿が中継されました。眠っていたのかどうかは定かではありませんが、この特別国会の内容は、相当重要な選挙であることは皆さまが知っている通りであり、さらにはテレビで放映されている状況下であれば一般の私の感覚でいうと、緊張感が走り、背筋がピンっと張るような状況に思えます。

その状況下であるにも関わらず、眠くなるといったことがもし起こるのであれば、恐らく日々の睡眠の質が相当悪く、日中の仕事業務に支障をきたしてしまっている可能性が考えられます。

思い返せば、日本では、睡眠時無呼吸症候群 (SAS: Sleep Apnea Syndrome、 以下 SASと記載) が関与していたであろう事故が多発しております。

・2012年7月11日、首都高速湾岸線で発生。渋滞で減速していたワゴン車にトラックが追突し、ワゴン車に乗っていた4人が死亡、2人が重傷を負った。事件後の取り調べの結果、運転士はSASと診断

・2012年4月29日乗客約40名を乗せたバスが群馬県藤岡市の関越道で防音壁に衝突し、乗客7名が死亡する大事故

・2003年2月26日JR山陽新幹線岡山駅で東京行の新幹線が、所定の位置より約100m手前で止まり、3両ほどがホームからはみ出したまま停車。車掌が運転席に駆けつけると、運転士は腰掛けたまま睡眠中であった。後の調べで、この運転手は体重が100kgを超える肥満タイプであり、眠りが浅いなど数年前からSASの自覚症状あり 

上記のように、本来なら気を張り、眠気などとは無縁に思える状況下で睡魔に負けてしまうのが、この疾患の怖いところになります。

以前は、やる気がない、気持ちの問題だといわれていたような、日中の仕事のだるさ、倦怠感も、実は この疾患が関与していることは大いにありえます。

SASには、閉そく性と中枢性、そしてその混合があります。

『閉そく性SAS』では激しい鼾(いびき)がみられますが、『中枢性SAS』では特徴的ないびきはみられませんので、私の旦那、妻は、いびきをかいてないから大丈夫だと結論付けるのは早いかもしれません。

症状でよくいわれているのは、頻回の中途覚醒、睡眠時の無呼吸状態、昼間の傾眠傾向だけではありません。 起床時の頭痛、 夜間の頻尿、 こむら返り、 早朝高血圧、 月経不順、 抑うつ状態 など一見関連性がなさそうに思える症状も実は、SASが関連していたりします。特に眠っている状況のことは自分ではわからないため、起床時や日中の症状、夜間目を覚ました時の症状、早朝の高血圧、頭痛から、もしかしたら自分は睡眠の状態があまりよくないかもしれないと疑うことが重要となります。家族などの同居者がいない方は、特にこの覚醒時の時に自覚する症状を大切にするといいでしょう。

また、SASは、肥満、糖尿病、高血圧、コレステロール異常、不整脈、心臓の血管障害、脳の血管障害、動脈硬化などにとても密接に関わっています。

当院では、この『SAS』をできるだけ早期に発見、治療を行うため、自宅に持ち帰って行う検査(簡易型PSG(ポリソノグラフィー)を準備しております。この医療機器をお貸して、2日間検査を行って頂きます。

その結果次第で、より精密な検査を行う必要があると判断される場合は、

1、在宅での終夜ポリソムノグラフィー検査(在宅フルPSG検査) 

2、入院での終夜ポリソムノグラフィー検査(入院フルPSG検査) 

に検査を進めることになります。

在宅フルPSG検査では、当院提携している会社から、電話連絡させて頂き、自宅に配送させて頂き、自宅で検査を行い、同封された着払い伝票を持って、それをヤマト便取り扱い店(セブンイレブンなど)に持っていき、送料はかからない状態で返送して頂き、解析結果は再度クリニックでお話をするといった内容になります(保険点数は、脳波検査判断料込みで3750点となり、 3割負担で 患者さん負担は、約 1万2千 円前後です)。

入院フルPSG検査は、大きな病院を再度受診する必要がありますし、一泊入院する必要があります。また費用が上記の値段にさらにかかることが多いです(上記の保険点数に、入院費用、および個室代、食事代:合計3~5万が目安)。

どちらの場合も、実際に検査しても、AHI(無呼吸低呼吸指数) 20未満の場合はCPAPが導入できないなどの欠点もあります。

もし治療をしたほうがいい結果であった場合は、よく行われるのは、CPAP療法とマウスピース療法です。このうちCPAP療法は、鼻に装着したマスクから圧力を加えた空気を送り込むことによって、ある一定の圧力を気道にかけ、気道の閉塞を取り除く治療法です。中等症から重症の患者さまにとても有効です。検査結果をふまえて保険診療が可能かを判断していきます。また無呼吸だけではなく、低呼吸が多い方に関しては、CPAP療法だけでは不十分であることが多く、Bi‐levelでの圧設定が必要となりますので、処方する機械の種類を当クリニックで選定させて頂きます。

後者のマウスピース療法は、比較的に軽症の患者さまが適応になります。専用のマウスピースを装着することにより、下顎を上顎よりも前に出るように固定されるので、気道を広く確保することができます。これは口腔外科、歯医者で作成することができますので、一度かかりつけの病院に確認して頂ければと思います。 

睡眠の質というものは、自分ではなかなか判断が難しいものです。ただ、日中の倦怠感、抑うつ感情、高血圧など日中に感じる異常から、この疾患を疑うことで早期発見ができるのです。

是非、日本の首相を務める方にも、お仕事で社会生活を送られる方々、車の運転をしますという方も全員、一度 ご自身の日中の症状を思い返してみて、少しでも当てはまることがありましたら、一度当院にご相談頂ければと思います。睡眠の質を高めることが、日中の質を高め、そして将来の病気の予防につながるのです。 

明日からの皆様の過ごす日々が、より活動的な一日になりますようにお祈りしております! 

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