- 8月 13, 2024
- 8月 16, 2024
NMNサプリメントについて
最近は、NMNというサプリメントが世間をにぎわしていることはご存じでしょうか。
実は、私も愛用しています。
今日は、NMN というサプリメントは何なのかを簡単にお話したいと思います。
NMNとはニコチン酸モノヌクレオチド という物質で、ビタミンB3の代謝された物質です。
これだけでは何のことか全くわかりませんよね。 まずなぜこのようなサプリメントが出てきたのかから説明いたします。
現代は、世界中で超高齢社会に突入してきております。寿命が延びると同時に健康寿命との差が問題視されるようになってきました。
これからの時代は、寿命を延ばすということも大切ですが、それと同時に、””いかに健康でいられる時間を長くするか”” ということが重要になってきます。
それは、Productive agingという言葉があるように、私たちが年を重ねる時に健康的で、生産性のある老後をすごせるような生き方を達成するということです。
それでは、老化とは何なのか、寿命とは何なのかをしっかり理解することが重要です。少し難しい言葉でお伝えすると、
一つ目、 人間の老化や寿命を制御して、我々の臓器をコントロールするような中枢部は存在するのか
二つ目、 その中枢部分は、各臓器とどのように連携をとり、どのように連絡をとっているのか
三つ目、 その連携するシステムを媒介している物質は何なのか
これが、もし解明できると、それに介入する物質をたくさん摂取すれば、健康的に臓器をコントロールできるのではないかと考えられるわけです。
2010年になる直前に、老化のプロセスを証明する報告がなされました。それは、Sirt1遺伝子であります。聞いたことはあるような、ないような言葉ですが、カタカナにすると
サーチュイン1です。 聞いたことがある方もおられるのではないでしょうか。これは、数々の代謝の制御に重要な仕事をしていることは科学的にも証明されております。例えば、
インスリンの分泌は膵臓のβ細胞が分泌しますが、これは血中の糖分に反応して分泌されますが、このプロセスを促進する作用にサーチュイン1遺伝子は関与しております。当然、他の様々な
臓器(骨格筋、肝臓、脳)でも働きかけていることは報告が多数あるわけです。そしてこのサーチュイン1の機能を強めたマウスでは、老化が遅らせれて、長生きすることも証明されています(Cell Metab 416-430 2013)。これを人間で換算すると、女性でいうと10年ほど、男性でいうと7年ほど寿命が延びるらしいです。
こうしたサーチュイン1が働くのに必要な物質がNADという物質です。カタカナでいうと、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド です。 カタカナにしても全然ピンときませんね(笑)。
簡単にいうと、自動販売機を動かす時に必要な硬貨 みたいなやつです。 自動販売機はしっかりジュースを冷やしていつでも稼働できる準備がいくらできていても、硬貨がないと(入ってこないと)動きませんよね。 それと同様で、人間のサーチュイン1のコントロールセンターでも、このNADがないと、どんないい臓器制御コントロールセンターをもっていても、”宝の持ち腐れ”になってしまうわけです。
では、このNADを作り出すシステムが重要になってきます。もしくは、補充をすることが重要になってきます。 しかも加齢に伴ってNADは作り出せない、減少してくることがわかってきています。
これが冒頭の、サプリメントを摂取するという話につながってきます。
NAD Boostingを
★ビタミンB3から サーチュイン1が刺激されるまで
ニコチンアミド(ビタミンB3)
↓ NAMPT
NMN(ニコチン酸モノヌクレオチド)
↓
NAD+
↓
SIRT1
これをみると、健康的に食事を食べ、NAMPTを増やし、NMNを 補充すれば、よりサーチュイン1を活性化できると考えます。
NAMPTは、運動で上昇させることができる物質ですが、この夏場の気温からもなかなか運動を生活に入れ込むのが難しいと感じると思います。そのためよくあるマルチビタミン剤に含まれる
ナイアシン摂取するだけでは不十分になってしまうわけです。
NMNを含む食材は、枝豆、ブロッコリーですが、量としては相当少ないので、食材からの摂取は困難です。
NMNを摂取した結果
それでは、NADを増やすために NMN摂取 したときにどのような変化が具体的に現れるかをお話しておきます。
マウスでは(条件がそろえて比較しやすいためよく病態を理解するために利用される)、
マウスに高脂肪食を食べさせると、太ってきて2型糖尿病になります。また自然に老化させているマウスも自然に2型糖尿病にもなります。どちらでも2型糖尿病を発症したマウスは、NAMPT低下によるNAD合成の低下をもってSIRT1の活性の低下が起こり、様々な代謝の問題が起こってくることが予想され、2型糖尿病を併発しているわけです。
NMNをマウス(5カ月齢~17カ月齢に12カ月間NMN)を投与しつづけるという実験です。マウスの加齢に伴った体重の太りがなくなり、エネルギー効率がよくなり、インスリンの感受性も改善、脂肪の代謝も改善しました。さらに骨格筋では、エネルギーの産生工場である、ミトコンドリアでのエネルギー産生能力が改善する、免疫細胞がふえる、遺伝子の若返りも確認できました。
人間での効果は、
閉経後の女性のやや過体重の、前糖尿病状態の方に一日250mg 10週間内服を続けました。
NMNを摂取した方は、採血で、NADの量を確認するとしっかり増えていることが確認できました。NADの代謝産物もふえていることからも体内で使用できていることも確認できております。
そして、筋骨格筋のインスリン感受性を25%あげました。これは、つまり10%体重を下げた時の代謝の改善に匹敵します。
NAD boostingをすることで筋骨格筋のインスリン感受性を改善し、例えば70kgのひとが7kgやせるということで、これがどれだけすごいことかは、ダイエットに苦労している方はよくわかると思います。
まとめ
長々とお話ししましたが、代謝の回転効率に関わる脳中枢を活性化するために、NMNを内服すると、その結果インスリン感受性をあげることがわかり、病態的な期待できる作用としては、老化に伴う、脂質の代謝、血糖の代謝の低下を改善して、エネルギー産生能力をあげる ということです。
ちなみに、サーチュイン1を活性化させる、もっと簡単方法は、””空腹時間を増やす”” です。食事がとれていない状態があると、脳はなんとか生き残るためにこのサーチュイン1を活性化して、交感神経を介して骨格筋を刺激して、身体活動量の上昇、体温の上昇、酸素消費量の上昇をもたらして代謝の回転をあげてくれます。睡眠の質も高めることもわかっており、年々衰えていく睡眠の質を改善してくれます。つまり若い人の生理学的な状態を保つことができるようになっていく、老化を遅らせることができるのです。
注意点・点滴はダメ
NMNの点滴は臨床研究で安全性を保証されていません。潜在的な危険性は、3つあります。
1、 高濃度のNMNは、SARM1というNAD分解酵素を活性化させる
2、 SARM1の活性化を引き起こす突然変異をもった人たちは、運動神経の麻痺(ALS)を起こす
3、 サイクリックADPリボースの血中濃度を測定しない限りは、SARM1活性化状態はわからない
経口投与の場合は、腸管で吸収する際に一定の限界があり、ある一定以上は吸収しませんので安全性の面も証明されています。 あくまでも内服にしましょう。
サプリメントの選び方
世の中に何百というNMNを出している会社があります。
- 生体内に存在しない不純物が入っていないものを選びましょう
- NMNは鏡像体があり、αとβがあります。体の中で使用できるのは、βNMNだけです。 αNMNは体での作用は証明されていない。
当クリニックでも扱っておりますのでご相談ください。