- 7月 29, 2025
今更ひとには聞けない、食事でエイジングケア
皆さまは、食事はどうしてますか?
自分でつくる方もいれば、妻が作ってくれる方、最近では主人も作ってくれる方もおられるようです。
コンビニ弁当を主食している方もおられ、健診で高血圧、脂質異常症、糖尿病を指摘された方が当院に多数相談にこられます。
そしてその時に、皆さま共通してお話になられる内容として、『薬はやめられますか?』と質問をされます。
私も何とか、薬を減らせるように日々診療を行うように心がけてはいるのですが、いかんせん薬は、根本の病因を治療しているというよりかは、本質を改善しているわけではなく、対症療法的に血圧をさげ、脂質を下げ、血糖をさげているだけなので、やめると元に戻ってしまうのです。ただ、薬を減らすことは不可能ではありません。食事、運動療法をしっかり行うことで減量、中止にできる、もしくは条件付きで一旦中止にできることは可能になりますので皆様、あきらめないでください。
最近発表された論文では、圧倒的に寿命に影響するのは、糖尿病と喫煙が一番悪いという結果でありました(Circulation 2023;147;1137-1148, NEJM2025:doi:10.1056/NEJMoa2415879)。糖尿病があるだけで、心臓血管病 2.3倍、非心血管死リスクが 1.7倍、コロナ インフルエンザ 重症感染のリスクも上昇し、うつや不安神経症など自殺などの問題もでてきます。また癌にも罹患しやすいともいわれています。不整脈、認知症にも関わり、老年疾患に強く影響してくるわけです。高血糖がなんで、こんないっぱい病気になるのか不思議ですよね。
それでは、その高血糖が恒常性を破綻させている状況を、どのように改善したらいいのかが重要になるわけで、それに一役買っているのが食事となるわけです。そして、加工食品をさけ、甘味料を使用していない食品を食べる方がいいということは誰しも知るところだと思いますが、意外にAGEについては、詳しくは知られていないと思います。
★ AGEとは高血糖の呪い
AGE(Advanced Glycation End-products)とは、日本語では「糖化最終生成物」と呼ばれ、体の老化や生活習慣病に深く関係している物質で、体内で 糖(ブドウ糖など)と タンパク質が結びつき、加熱や時間をかけて変化するとAGEができます。
これは「糖化」という現象で、食べ物を焼いたり揚げたりすると表面に茶色いコゲができますよね?それもAGEの一種になります。
AGEは、肌の老化 : しわやたるみの原因
血管の劣化 :動脈硬化の原因となり、心臓病や脳卒中のリスクが高まる
糖尿病・認知症の進行:AGEはこれらの病気にも悪影響を与える
に強くかかわっています。
そして何が一番つらいかというと、高血糖は、血糖コントロール治療をしたとしても心血管病を起こすリスクとして残り続けることが分かってきました。
これをヨーロッパ風に言うとメタボリックメモリー、レガシーエフェクトと言いますが、日本風にいうと血糖の呪い といった表現でいわれております。
血糖をコントロールできても、完全に解決に至ってないわけです。なぜかというと、高血糖になることで、AGEが産生され、受容体に作用することで酸化物質を作り上げてしまい細胞毒性をもつことになります。またコラーゲンは劣化しゴムみたいになり、これらは血糖を低くコントロールしてもAGEは逆戻りしてくれず体内に残り続けることになるのです。半減期から計算すると、コラーゲンは何十年、関節なら100年ほどかかる計算になるわけです。つまりAGEになったものが蓄積すれば細胞回復は困難な状況になると言われています。
★ 健常者も体内でAGEを産生し、食事からも摂取している
そのため高血圧、糖尿病、脂質異常症などを管理することは重要ですが、最近言われているのは、そのAGE管理をしっかり行うことです。
糖尿病を例にあげると、よくHbA1cという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。これは、Hb(ヘモグロビン)の糖化されている%のことです。つまり、糖尿病でない方でも正常値である5%ぐらいは、食事の影響で糖化されているということがわかります。その糖化される現象はHbだけではなく、アルブミンも、グロブリン、フィブリノーゲンも糖化され、さらにそれの10%ぐらいは、AGEに変化してしまうことも分かってきております。
また、食事からも摂取してしまっていることは指摘されており、食べ物を焼いたりすると、外因性のAGEというものが増えるといわれています。
そして食品中のAGEの7%が体内の中に留まるとされています。
生活習慣病のどの項目よりも、AGEの数値が寿命に関連しているといったことも指摘する先生もいます。というのもAGEが、活性酸素を増やすサイクルを進めてしますことになるわけです。コラーゲンのAGE化はしわを促進しますし、脳蛋白のAGE化は、アルツハイマー、パーキンソン病などのリスクを上げるとも言われています。また乳がん、膵がん、MASH肝臓がん、大腸がんにも影響します。
★ AGEレス食品でエイジングレスにしましょう
それでは、なんとかこのAGEに介入したいと考えるわけです。
考え方は、生活習慣病管理、治療を行いながら、食事からのAGE摂取量を減らし、運動や点滴療法で抗酸化物質を減らすことを努力することです。
食品由来のAGEを抑えるにはどうしたらいいのでしょうか。吸収を阻害するためには、調理法が重要であり、揚げ物、焼き物を避け、煮たり、茹でたりしたスローフードにするのが良いとされております。ファーストフード、甘味飲料(AGEを作りやすい果糖が含まれている)は今日からできるだけやめましょう。食べ方にもコツがあり、お肉の摂取方法も、焼肉ばかりたべずに、しゃぶしゃぶにするとか、ブリの照り焼きではなく、ブリの刺身、煮ものにしてブリ大根、ブリ生姜と一緒にたべると美味しいと思います。
最近は、アマゾンなどでも売っている、油を使用せずに焼くというエアーフライヤーも活用してもよいかもしれませんし、鳥のから揚げも揚げる前に、レモン酢に15分ほど浸し、それから焼くとAGE産生は半分になるといわれています。
あと食べ方ですが、食後の高血糖をさけるためにお箸を5分ほど置き、ゆっくりと食べるようにして、食事の開始5分は米を食べないようにするなど工夫をすることです。食後の高血糖をさけることでAGEを産生を抑制、AGEの外的な摂取をさけることで体内に蓄積する総AGE量を減らすことを心掛けましょう。
食事の内容としては、ブロッコリー、まいたけ、玉ねぎ、セロリなどはAGEレスに貢献できるといわれているので積極的にとって頂くのがいいと思います。
そして少なくともできてしまったことから発生する酸化物質には、効果は今のところ科学的に証明されているわけではありませんが、高濃度ビタミンCや、グルタチオン点滴などで対処するといったことがもしかすると意味があるかもしれません。
今日は、焦げた焼きブリをみて、AGEを思い出し、ブログでAGE対処の仕方を書いてみました。最後まで読んで頂きありがとうございました。