糖尿病とは
糖尿病は、血糖値(血液の中に含まれているブドウ糖)が基準とされる数値よりも慢性的に高くなってしまう病気です。つまりブドウ糖がうまく細胞に届けることができず、細胞がエネルギー不足になってしまう状態とも言えます。本来ならインスリンの分泌によって、再び血糖値はバランスのとれた状態に戻るようになるはずが、インスリン量の不足、作用不足などが影響して、血液中にブドウ糖が溢れてしまう状態になり全身の血管が障害を受けてしまいます。
また糖尿病は、自覚症状が出にくい病気なので、病状を進行させやすい特徴があります。
"サイレントキラー"という異名をもちますので、できましたら検診で空腹時血糖異常を指摘された方、口渇、頻尿、多尿傾向、全身倦怠感、体重減少など自覚症状がある方は一度精査することをお勧めします。
それでも放置が続けば、血管障害が引き起こされ、微小血管が集中している部位で合併症がみられるようになります。なかでも、網膜、腎臓、末梢神経で起こりやすく、これらは糖尿病三大合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害)と呼ばれています。ま太い血管でも動脈硬化を促進させるので、脳血管障害(脳梗塞など)や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)など重篤な合併症の発症リスクが高くなります。
治療法
当クリニックでは、採血で糖尿病の診断に必要な「血糖値」「HbA1c ヘモグロビンエーワンシー」を行うことができます。糖尿病の種類(1型か2型)、インスリン抵抗性度合なども採血で判別します(治療方針で重要です)。尿中の蛋白尿の有無やアルブミン尿を調べることで高血糖による腎障害の程度も予想することができ、治療効果判定にも活用致します。
1型と2型で治療内容が少し異なります。
糖尿病1型 | 糖尿病2型 | |
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日本の頻度 | 5% | 95% |
体系 | やせ型 | 肥満型とやせ型 |
発症年齢 | 若年に多い | 中年に多い |
原因 | 膵β細胞の ウイルス感染、自己免疫 |
遺伝・不摂生な生活週間 |
治療方法 | インスリン注射が必要 | 食事、運動療法が主 |
糖尿病治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱が重要になってきます。当クリニックでは、医師もしくは、管理栄養士(糖尿病療養指導士資格あり)から日々の食事指導をさせて頂きます。またセンサーを2週間装着する検査(Free StyleリブレPro、Abbott)では、食後高血糖の有無なども評価することができ患者さん毎の血糖の推移に合わせて薬の調整をすることが可能になります。薬剤は、内服薬とインスリン療法の2種類があり個々の状態に合わせて最良の組み合わせで処方が可能です。生活習慣の改善だけでは、血糖コントロールが難しい場合は、経口血糖降下薬も併せて行います。最近は、心臓、血管、腎臓などをしっかり守りながら、血糖コントロールをしっかり行う内服薬も出てまいりましたので、その方に合った薬を処方することが可能です。それでも効果が乏しければ、インスリン注射も検討されます。
また、糖尿病の全身合併症において早期に強力に血糖コントロールをすることで、その後長期間にわたって合併症の発症、進展を抑制する現象が報告されており、これを「legacy effect(遺産効果)」、 「metabolic memory(代謝記憶)」と命名されるぐらい、早期のしっかりとした治療がどれだけ重要かもわかって頂けると思います。
糖尿病性網膜症
糖尿病の3大合併症でもある、糖尿病性網膜症のお話です。血糖のコントロールを行えば、かなり予防ができます。しかし、あまりにも急激なコントロールを行うとかえって網膜症を悪化させることもあります。また血糖と同時に腎症の合併を予防することや、血圧、脂質異常症のコントロールも重要になります。運動についても状態によっては制限されることもありますので眼科医、内科医の指示に従う必要があります。
近年では、海外、国内で行われたいくつかの大規模臨床試験の結果から厳格な血糖コントロール(具体的には、HbA1c 7.0未満が目標)が糖尿病網膜症の発症を予防することが明らかになっています。
ただし、HbA1c値に関わらず、糖尿病の罹患機関が5~10年の患者さんでも急激に網膜症の発症のリスクが高まることも報告されています。自覚症状がなくても、糖尿病と診断された方は、当クリニックモールには眼科も併設されておりますので、定期的に眼科を受診するようにしましょう。必要に応じて眼科に紹介状をかかせて頂きます。
推奨される眼科初診の時期
1、1型糖尿病
1型糖尿病では、網膜症の有病率、重症度と糖尿病の罹病機関とに密接に関係があることが報告されております。思春期前には、視力低下を引き起こすような網膜症が発生することは少ないと言われてますが、発症後6~7年で網膜症発症のリスクが上昇するため、発症5年をめどに眼科的検査を実施することが勧められております。成人症例でも1型糖尿病発症は多いものの、データが不十分であるところはありますが、現段階では1型糖尿病と診断された時に眼科受診を受けることが推奨されます。
2、2型糖尿病
2型糖尿病の発症時期を決定することは困難で、診断時よりかなり以前の可能性があります。2型糖尿病患者さんの全体では、約30%の症例が糖尿病診断時にすでに糖尿病網膜症を発症していると指摘されています。
特に30歳以上で糖尿病と診断された症例で、推定罹病機関5年未満でも、28.8%、15年以上では77.8%が何らかの網膜症を有し、増殖糖尿病網膜症はそれぞれ2.0%、15.5%の有病率でありました。
耐糖能異常者であっても網膜症が認められることも含め、これらのことから2型糖尿病と診断された時点で直ちに眼科受診を行うことを強くお勧め致します。
(糖尿病網膜症診療ガイドライン 令和2年12月より抜粋)
糖尿病網膜症の進行度
1、単純網膜症
初期の糖尿病網膜症です。最初に出現する異常は、細い血管の壁が盛り上がってできる血管の瘤や小さな出血です。これらは血糖値のコントロールが良くなれば、改善することがあります。この時期には自覚症状はほとんどありません。詳しく網膜の状態を調べるために、眼科で血管造影(=蛍光眼底造影検査)を行うこともあります。糖尿病の患者さんには、基本的には運動を積極的に行ってもらいます。しかし単純網膜症の方には、強度の運動処方は行わないように注意が必要です。
2、増殖前網膜症
単純網膜症からさらに進行した状態です。細い網膜血管が広い範囲で閉そくすると、網膜に十分な酸素が行きわたらなくなり、足りなくなった酸素を供給するために新しい血管を作り出す準備を始めます。この時期になるとかすみなどの症状を訴えるかたもでてきます。急激な血糖コントロールは糖尿病網膜症を悪化させることが報告されており、このメカニズムは不明な点が多いのですが、一般的にはHbA1cの改善度は、1カ月に0.5~1%を超えないようにすることが推奨されております。そして運動処方に関しても、眼科的治療を受け、安定した状態でのみ歩行程度の運動は可能となります。
3、増殖網膜症
進行した糖尿病網膜症で重症な段階です。新生血管が網膜や硝子体にむかって伸びてきます。新生血管の壁が破れると、硝子体に出血することがあります。硝子体は眼球の中の大部分を占める透明な組織で、ここに出血が起こると、視野に黒い影やごみのようなものがみえる飛蚊症と呼ばれる症状を自覚したり、出血量が多いと急な視力低下を自覚したりします。
網膜剥離なども起こし、手術を要することも多くなります。この時期になってしまうと血糖の状態に関わらず、網膜症は進行してきます。そうなる前に血糖コントロールが重要であると考えます。ただ、血糖コントロール不良は、大血管や腎臓にも動脈硬化の原因となりますので引き続き血糖コントロールは行う必要はあります。ただし運動処方は困難となってしまうことが多いのが実情です。
糖尿病性腎症
皆様はご存じですか?
透析導入の原疾患は、糖尿病に伴う腎障害がひどくなって導入に至ってしまうことが一番多いのです。
日本透析医学会の調査によると、2020年末時点の透析患者数は約35万人です。増加傾向はみられますが、2010年ごろから鈍化傾向ではあります。
透析導入の原疾患は、糖尿病性腎症が40.7%と最多で、腎硬化症(17.5%)、慢性糸球体腎炎(15%)が続きます。腎硬化症も腎臓の動脈硬化を起因とする病態であり、糖尿病もリスク因子の一つとなります。
つまり、腎臓が悪くなり、透析に至ってしまう原因に糖尿病が半分以上の方に関与していることがわかります。
最近では、糖尿病性腎症への早期からの治療介入や治療薬の発達により、腎機能が悪化するスピードは以前ほど速くない印象です。とはいえ、長期間罹病機関を有する患者さんで透析導入される方もやはり存在し、いかに重症化を予防するかが重要になってきます。
早期に発見した場合は進行を抑制するような内服薬はございますのでご相談ください。
尿蛋白を意識することは重要なんですか?
重症化予防では、尿中の微量アルブミン検査が極めて重要であり、当クリニックでは、即日に結果を出し説明することが可能です。
そもそも尿蛋白を調べることが重要である理由は、尿蛋白が陰性であった症例と比べ、陽性であった症例では、糸球体濾過量(GFR)の低下速度は約2倍はやくなってしまうという報告もあります。
つまり、尿蛋白、尿中微量アルブミン尿は末期腎不全や、心臓血管死亡のリスクを示す大変重要なバイオマーカーなのです。健診でも、尿検査が組み込まれているのはそういう理由です。
そして、さらにです。
自覚症状のない微量アルブミン尿の段階で適切に治療介入を行うと約半数の糖尿病性腎症の患者さんが正常アルブミン尿に改善し、腎、心血管イベントの発生率も低下することがわかっています。(Araki S.et al. Diabetes 2007;56:1727-1730)
当クリニックでは、基本的には半年に一回は尿中微量アルブミン検査を実施するようお勧めしております。もともと糖尿病のために受診して頂いている方には毎回、来院時に尿検査はお願いしているので、抵抗なく受け入れてもらえることが多いです。
糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害も、糖尿病の代表的な合併症のひとつです。足や手の末梢神経障害が主なものですが、その症状の出方は様々です。手足のしびれ、ケガや熱傷の痛みに気づかない場合、糖尿病性神経障害の可能性があります。このほか、筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、ED(勃起不全)などがみられることもあります。
根本的な治療は困難なことが多いですが、疼痛緩和療法で対処しますのでご相談ください
大血管障害、虚血性心疾患
準備中