現代は4人に1人が睡眠障害に悩んでいると言われております。
睡眠は、体と心の疲労回復、記憶の定着、ストレス緩和、免疫の強化などに大きく影響する重要な人間の休息活動です。当クリニックでは、その睡眠障害の一つとして考えられる睡眠時無呼吸症候群の精査、加療を行っております。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に停止したり、低呼吸状態が続いたりする病気です。日本にはSASの方が300万人から500万人にものぼると言われており、働き盛りの30代から50代の男性に多く見られます。
具体的には、睡眠中1時間あたりに10秒以上の呼吸停止、または換気量50%以下とされる低呼吸状態が5回以上も起こるという場合に診断されます。SASを放置していると、脳や心臓といった臓器にも影響が及んでしまい、高血圧(2倍)、糖尿病(1.5倍)、脳卒中(4倍)、心疾患(3倍)などの病気の発症リスクが高まります。
なお、この病気による低呼吸状態は睡眠中に生じるため、ご本人が気づいていないこともあります。しかし、熟睡感が得られないので、自分自身では睡眠時間を十分にとっていると思っていても、実際には日常生活に支障をきたすようになります。下表のような症状がみられるときは睡眠時無呼吸症候群の可能性があるので、お早めに当クリニックの睡眠時無呼吸症候群外来をご受診ください。
このような症状の方はご相談を
- 家族などから「いびきが大きい」と言われた
- 「寝ているときに呼吸が止まっている」と言われた
- 突然息が苦しくなり、夜中に目が覚めてしまうことがある
- 夜間にトイレに行くことが多い
- 目覚めが悪い、起きたときに疲労感がある
- 起きたとき、過度に喉が渇いている
- 肥満傾向がある
- 日中に強い眠気を感じる(会議中、運転中)、倦怠感、息苦しさ、足の浮腫がある
- 集中力や記憶力が低下した
- 血圧コントロールがうまくいかない、朝方の血圧がとても高い など
睡眠時無呼吸症候群の検査
上記のような症状に心当たりのある患者さまや、
また睡眠時無呼吸症候群に合併しやすい高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病(約3~4倍)を指摘された方は、調べられたほうがよいですし、過食、アルコール多量飲酒、運動不足、肥満の方も一度調べることをお勧めします。
まず初めに睡眠時無呼吸検査の簡易検査を行います。
検査は、
- アプノモニター(簡易睡眠時呼吸検知装置)による簡易検査
- ウォッチパット ユニファイド(フィリップス社)による簡易検査
- 在宅での終夜ポリソムノグラフィー検査(在宅フルPSG検査)
- 入院での終夜ポリソムノグラフィー検査(入院フルPSG検査)
(4、入院ポリソムノグラフィー検査を希望の方は、近隣の医療機関をご紹介致します。)
まずは、1、アプノモニター検査を行います。口と鼻に呼吸センサーを、指に血中酸素濃度を調べるセンサーを取り付けて一晩就寝していただきます。なお、この検査は入院して行う必要はありません。専用の機器を貸与いたしますので、ご自宅で検査を行っていただき、当クリニックで解析いたします。時間当たりに10秒以上の無呼吸・低呼吸が何回生じるか、血中酸素濃度の低下が起こっているかを調べることにより、睡眠時無呼吸症候群の程度を把握することができます。
保険診療にて720点ですので、3割負担で2160円、1割負担で720円で検査ができますのでそこまで高額な検査ではありません。
2、ウォッチパットユニファイドによる検査は、鼻に呼吸センサーを装着することを嫌うかたや、簡易アプノモニター検査で睡眠時無呼吸症候群と診断されたものの、CPAPの導入をするべきか不明瞭となってしまった方に対して、フィリップス・レスピロニクス社が開発したこの機器で検査をすることも行っております。簡易型アプノモニターでは、いびき音を確認するため鼻にカニューラを取り付けましたが、ウォッチパットユニファイドはカニューラの代わりに、首にいびき確認センサーを取り付けてもらいます(写真あり)。
ウォッチパットユニファイドは指に取り付けた機械で、SpO2(体の酸素状態を測定する数値)を測定する検査に加えて、末梢動脈波を精度よく測定する機能が加わっています。
末梢動脈波を細かくみることで、実際に装着している人が、覚醒しているのか、睡眠状態かを(軽睡眠、深睡眠、REM睡眠)を区別することができます。特に実際に起きているかどうかを確認することは重要です。
従来のアプノモニターは(低呼吸+無呼吸)÷測定時間=1時間あたりのAHI(5回/1時間 以上を睡眠時無呼吸症候群疑い)を測定します。
装着している時間は、常に測定しているため、途中覚醒している時間も含めてカウントをしてしまうため、本来のAHIよりも低くでる傾向があります。その結果、本来は治療すべきなのに治療適応のラインを下回ってしまうことがあります。
この誤差を非常に少なくしたのが、ウォッチパッドユニファイドになります。実際、入院で行うようなPSG(ポリソムノグラフィー)と強い相関が示されています(低呼吸、無呼吸の区別は困難になります)
当クリニックでは、AHIで睡眠時無呼吸症候群と診断されたものの、CPAPが導入できない方に対して再度検査することで、より多くの人が治療できればと考えております。
もし、1、もしくは、2、でさらなる精査が必要と判断される場合は、3、在宅、か 4、入院でのフルPSG検査を実施します。在宅での機械の装着は難易度が高く、基本的には、4、の入院可能な医療機関をご紹介させて頂いております。
〈在宅PSG検査を、入院PSG検査の比較〉
自宅で実施できる、入院費用がかからないというメリットはありますが、訪問して説明はしてもらえるが、自分で装着する必要があるというデメリットはあります。
入院PSG検査は、睡眠時無呼吸症候群の重症度を細かく検査ができ、閉そく性なのか、中枢性なのかの違いも確認することができます。ただし、PSG検査は、大きな病院を再度受診する必要がある、一泊入院する必要がある、費用がかかる(保険点数3300点、3割負担のかたは9900円+入院費用、および個室代:合計3~5万が目安)、実際に検査しても、AHI 20未満の場合はCPAPが導入できないなどの欠点もあります。
ご不明な点がありましたらご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の治療は、患者さま個々の状態などで異なりますが、よく行われるのは、CPAP療法とマウスピース療法です。このうちCPAP療法は、鼻に装着したマスクから圧力を加えた空気を送り込むことによって、ある一定の圧力を気道にかけ、気道の閉塞を取り除く治療法です。中等症から重症の患者さまにとても有効です。検査結果をふまえて保険診療が可能かを判断していきます。また無呼吸だけではなく、低呼吸が多い方に関しては、CPAP療法だけでは不十分であることが多く、Bi‐levelでの圧設定が必要となりますので、処方する機械の種類を当クリニックで選定させて頂きます。
後者のマウスピース療法は、比較的に軽症の患者さまが適応になります。専用のマウスピースを装着することにより、下顎を上顎よりも前に出るように固定されるので、気道を広く確保することができます。